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〜 鉄道貨物輸送の新技術、トレイン・オン・トレイン方式について 〜

社会交通工学科3年 8078番 菅沼 智博

はじめに

 日本経済の大動脈である新幹線、その一つである北海道新幹線は、2015年に新青森〜新函館間が開業予定である。 この北海道新幹線は、新青森で東北新幹線と接続し、青函トンネルを通過して新函館に至る経路で計画されている。 また、東北新幹線は、2010年12月に全線開業し、東京と新青森を結ぶ全区間が完成予定である。

 北海道新幹線の開業にあたり、青函トンネル内の三線軌条化が進められている。 現在の青函トンネル内の軌道は狭軌で建設されているため、新幹線の標準軌による運行に対応させるのが目的である。 この三線軌条化により、在来線貨物列車と新幹線の共存運行が可能となる。
 しかし、青函トンネル内で共存運行を行うにあたり、新幹線と在来線貨物列車の速度差が大きな問題となっている。 新幹線が約300km/hであるのに対し、在来線貨物列車は約110 km/hであるため、速度差は約190 km/hである。 青函トンネル内に新幹線が在来線貨物列車を追い越す待避線がないことと相俟って、 新幹線の運行本数に大きな制限がかかることが予想される。

 この問題を解決するため、JR北海道ではトレイン・オン・トレイン方式という新たな貨物列車の運行技術を開発している。 私は、この技術が新幹線と在来線貨物列車の共存運行を行う上での重要な技術であると考え、また、 その将来の可能性について大変興味を持ったので、本稿で取り挙げることにした。



トレイン・オン・トレイン方式の概要

 トレイン・オン・トレイン方式とは、貨物自動車を貨物列車に積み込んで輸送するピギーバック輸送の列車版であり、 協働一貫輸送の1つである。在来線貨物車そのものを高速走行可能な新幹線貨物車に積み込んで運行する、 複合輸送の新たな技術である。

 この運行方式を行うために、
@在来線貨物車の積み込み
A在来線機関車と新幹線機関車の付け替え
この2点が必要である。

 次にそれぞれの具体的な運行方式、及び施設整備方法を示す。
@ ボーディングターミナルが青函トンネルの両端の坑口付近に設けられる。 ここには新幹線貨車が据え付けられ、在来線貨物列車がその上へ載ることで積み込みが完了する。




図1 トレイン・オン・トレイン方式の概要(JR北海道提供)



A 新幹線貨車にはコンテナ列車だけが積み込まれ、 在来線機関車はトンネル側の端部にあるダブルトラバーサで切り離される。
 ダブルトラバーサはボーディングターミナルの両端に設けられており、スライドすることで新幹線電気機関車に交換され、 青函トンネル内に進行する。



図2 ボーディングターミナルの概要(JR北海道提供)



 また、トレイン・オン・トレイン方式を導入することで、特に次の効果が期待される。
@ 新幹線電気機関車による、約200 km/hでの貨物列車の運行が可能になる。 これにより新幹線と貨物列車の速度差が縮まり、新幹線の運行本数の制限が緩和され、 新幹線が1時間間隔で運転される場合、貨物列車は三線方式に比べて2〜3倍程度に運行本数が増加する。



図3 運行方式の違いによる、列車本数の比較(JR北海道提供)


A 青函トンネルを通過する列車が全て標準軌での運行が可能となり、三線方式から標準軌への統一した運転方式が図れ、 保守コストの削減も期待できる。



トレイン・オン・トレイン方式の将来の可能性について

 私は、トレイン・オン・トレイン方式の技術は青函トンネル内での限定的な導入だけではなく、 全国的な新幹線ネットワークへの導入も検討すべきと考える。なぜなら、新幹線の軌道を使用した運行により、 鉄道貨物輸送の速度向上による所要時間短縮と本数増加による輸送力向上が期待できるからである。

 わが国の鉄道輸送を旅客輸送と貨物輸送に分けて考えると、旅客輸送は新幹線の整備・延伸により、 都市間輸送の大幅な時間短縮と輸送力向上が実現している。一方、貨物輸送は在来線での運行に限定されているため、 旅客列車ダイヤの制約などにより、運行速度や輸送力の向上が困難な状況にある。

 そこで、トレイン・オン・トレイン方式による新幹線貨物輸送が実現し、さらにネットワーク化された場合には、 都市間輸送における所要時間を大幅に短縮できると共に、 輸送力向上により低炭素型交通手段として自動車からのモーダルシフトにも対応でき、 環境負荷軽減に大幅に寄与するものと考えられる。

 このように、新幹線による貨物輸送は、 環境保護の観点からも極めて有効な手段であると言える。



おわりに

 トレイン・オン・トレイン方式の技術は、鉄道貨物輸送を大きく発展させる可能性を持っている。 現在は、北海道新幹線の青函トンネルにおける技術として開発が進められているが、 わが国の高速物流ネットワークの構築に向けた交通手段として、また、環境負荷の少ない交通手段として、 その効果は大いに期待できるものである。早期実現に向けた技術開発を進めると共に、 新たな交通システムとして機能させるための運用方法等について、今後さらなる検討が進められることを期待する。



参考文献

鉄道ファン2010年5月号、株式会社交友社、平成22年5月1日発行

どうしんヴェブ 北海道新聞(平成22年6月16日現在)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/bullet_train/222595.html

読売新聞 オンライン(平成22年6月16日現在)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100221-OYT1T00742.html

鉄道ホビダス トレイン・オン・トレイン始動。(上・下)(平成22年6月16日現在)
http://rail.hobidas.com/blog/natori/archives/2010/02/post_1209.html





 
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